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ビットコインは「スガノミクス」の波に乗れるか

ビットコインは「スガノミクス」の波に乗れるか
 安倍前首相の後任を決める自民党総裁選にて菅官房長官が選出され、国内外から早くも菅内閣の経済政策「スガノミクス」に期待が寄せられている。暗号資産市場にはどのような影響が出るのだろうか。安倍政権下の2017年、ビットコインは後にバブルと呼ばれるほどの大幅な価格上昇を見せた。ビットコインバブル崩壊直前には、日本人による暗号資産取引高が全世界のおよそ4割にまで達していたとの観測もある。背景として、多くの投資家が「アベノミクス」による円安・株高の恩恵を受け、市場全体がリスクオンムードだったことが挙げられる。さらに物価上昇率2%の目標も、世間の投資志向を強める後押しとなっていた。
さて、「安倍路線継承」を掲げて発足した菅政権だが、安倍政治を模倣し、そのままの踏襲を目指しているというわけでは決してないようだ。


「アベノミクス」と「スガノミクス」の違いを見ていこう
 安倍政権はマクロ経済を意識した政策を掲げ、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」の戦略を打ち出した。結果的に大幅な円安・株高となったが、日銀の協力を得た金融緩和と政府による財政出動による力が大きい。また、経済成長率2%という目標は達成できず、政策の本丸であった構造改革を基本路線とした成長戦略については道半ばとなった。さらに、15年9月に新たに打ち出した政策である、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障という安倍政権の第2ステージの「新・三本の矢」は、それぞれGDP600兆円、出生率1.8%、介護離職率ゼロを目標としたが、現時点でいずれも残念ながら未達のままである。

 対して菅政権が掲げるのはミクロ経済を重視した政策で、携帯料金値下げや不妊治療支援に見られるように個別の課題に対策をとることが特徴。その中でも省庁の縦割り打破やデジタル庁の創設は注目を集めている。現在、IT推進は経産省と総務省、電子政府に関しては総務省の行政管理局(旧総務庁)、マイナンバーは総務省の自治行政局(旧自治省)が行うなど、各業務が省庁を跨ぎ二重・三重行政となっているデジタル分野を一本化することが、人・カネのリソースの有効活用に繋がるだろう。首相は官房長官時代から霞が関へのにらみをきかせた強気の姿勢を示していたこともあり、安倍政権で成し得なかった構造改革の中でも省庁再編案への期待は大きい。

暗号資産市場への影響は?
 デジタル庁の新設によりIT分野のスピーディーな施策体制が整えば、安倍前首相も国会で言及していた、ブロックチェーン技術のさらなる普及と様々な分野での活用が前進する可能性が考えられる。早速、日本ブロックチェーン協会(JBA)の代表理事が平井デジタル改革担当大臣に表敬訪問し、「ブロックチェーンを日本の国家戦略に」という提案をしたとの動きもある。また、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)への試運転が世界中で広がる中、2020年日本でも「デジタル通貨グループ」が日銀の決済機構局に設置されるなど、実証実験に向けて本格的な動きが始まった。デジタル庁の誕生は、デジタル通貨の発行の実現に対して大きな効力を及ぼすだろう。根本的に性質の異なるデジタル通貨と暗号資産だが、セキュリティや利便性の面から考えてブロックチェーン技術がデジタル通貨にも用いられる可能性がある。その際、ブロックチェーンのネットワークシステムの持つ可能性が見直され、ビットコインの価値のさらなる裏付けとなるだろう。

 菅首相が以前から推進している地方創生政策にも目が離せない。すでに言及されている地銀再生案や国土強靭化計画などについて、「ふるさと納税」の発案者でもあり、かねてより地方分権を推し進めてきた菅首相の手腕には市場の関心も高い。2018年、岡山県西粟倉村にて日本初の地方創生ICO(Initial Coin Offering)が行われた例がある。地方分権政策により人・モノ・カネが都市部から地方に分散されていく流れが強まれば、地方ごとの新たな価値が認識され、地方自治体によるICOの事例が増えていくことに期待が持てる。またICO自体が地方への資金の流入を推し進めることにも繋がるので地方分権の実現に一役買うことが望めるだろう。