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デジタル人民元

電子化が遅れているといわれる日本で、ついに菅内閣によってデジタル庁の発足が発表された。また金融庁における中国金融研究会の開催に続き、2020年の7月には、日銀に中銀デジタル通貨(CBDC)グループが設置された。
デジタル通貨の分野において、1歩、いや、3歩も先に行く国がある。中国だ。
まず、人民元にはCNHと呼ばれるオフショア人民元とCNYと呼ばれるオンショア人民元の2種類が存在する。端的に言うと、オフショア人民元は中国本土外で流通し、香港金融管理局が管理している。オンショア人民元は中国本土内で流通し、中国人民銀行の国家外貨管理局が管理している。
米国とは思想や体制が全く異なる「大国」中国は、2050年までに米国の経済力、軍事力を抜き世界一の大国を目指していると言われている。米国に代わる覇権を狙っており、人民元を米ドルに代わる世界通貨にすることを目指している。「米ドルへの挑戦」と「覇権大国実現」への筋書き、その為には人民元の国際化は必用不可欠となる。
国際決済銀行(BIS)によると本年1月時点の報告書によれば、中銀デジタル通貨(CBDC)は、世界の中央銀行の80%の国々が取組んでいる。中国政府は中国人民銀行を中心に「デジタル人民元」のプロジェクトにいち早く着手し、中銀デジタル通貨(CBDC)の世界競争に一歩リードしている。正式導入の日時は公表されていないが、2014年からスタートしたデジタル人民元の計画は、2019年の時点で74項目のデジタル通貨の特許が申請され、深センと蘇州をはじめとした一部都市で試験運用が始まっている。
デジタル人民元の発行は、基本的に中央銀行から民間金融機関へのみといわれており、民間金融機関の同額の準備金と引き換えに中央銀行はデジタル人民元を発行する。民間金融機関は、企業や個人の同額の現金や預金をデジタル人民元と交換する仕組みとなっており、従来の人民元紙幣と同じ様に使用することが可能となる。
金融機関が保有する人民元紙幣の枚数以上の発行は行わないため、極度なインフレや激しい価格変動は起こらないとみられている。
デジタル人民元のシステムは、ビットコインなどの暗号資産とは異なり分散型台帳技術ではなく、中国人民銀行が中央管理者となる。中国人民銀行や民間金融機関はデータベースを運用し、デジタル人民元の流れのデータを保管することで、追跡が可能となる。他方、貨幣や紙幣であれば、完全に追跡することは困難だ。
デジタル人民元が主導権を握れば、中国政府は中国・アジア圏の資金の流れを把握し、調整できるようになる。また、特定の地域や所得層に対する金融政策への介入も可能となる。当然、マネーロンダリングやテロ資金の追跡は容易になる。
中国は現在、キャッシュレス大国と言われている。特に使用頻度が高いのはQRコードを用いた電子決済だ。キャッシュレス化の背景には、高額紙幣が存在しないため大金の持ち運びができない事や、偽札が横行している事が挙げられる。既に資金決済のかなりの部分がシステム化されているが故に、デジタル通貨への移行は比較的容易と考えられる。
最近の中国でデジタル人民元への移行が現実味を帯びてきた理由は、利用者24.5億人を抱える米Facebook社が2019年に発表した、暗号資産「リブラ」発行計画だ。このリブラと米ドルの存在を意識したが故にデジタル人民元の実現を急いだのではないかとみられている。
人民元の国際決済シェアは国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、2020年9月現在2%弱といわれており、世界第5位となっている。今後デジタル人民元が発行され、国際社会での流通が開始すれば、人民元の勢力が一気に拡大する可能性が考えられる。