地政学リスクでアップサイドはあり、ただし、常に利食いの準備を


【要旨】米国の新型コロナウイルス感染症の拡大にも関わらず動かなかった相場が米中地政学的リスクで再び動き出した。今回はイーサリアム主導ではあったが、ビットコインも追随する形に。重要なレジスタンスレベルである10,000ドルを安定的に上回る相場が続けば、上昇速度は加速する可能性はあるが、過去の先物・オプションポジションをみる限りこういう局面においてはショートも増えることは注意されたい。アップサイドはまだあると見込まれるが、利食いの準備はしておきたい。

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足元、新型コロナウイルス感染症の拡大、そして地政学的なリスクイベントが勃発している。リスクイベントの最たるものは米中対立の悪化であろう。そんな中、今まで横這い圏内で推移していたビットコイン(BTC)は遂に上昇の兆しを見せ、BTCUSDベースでは、まず9,700ドルをブレイクし、そして、重要なレジスタンスレベルであった10,000ドルを26日に破った。閑散としていた市場に活気が戻ってきたことが示唆される。

新型コロナウイルス感染症については、米国の状況は今なお落ち着きをみせていない。アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)によると、フロリダ(過去一週間の新規感染者数は74,468人)、カリフォルニア(同69,170人)、テキサス(62,254)等は特に状況が酷く、感染拡大に歯止めがきいていない状態である。そんな(通常であれば)リスクオフ環境にも関わらず、連邦準備制度理事会の大幅な金融緩和(国債・クレジット買入れ等)の効果もあり米国債10年利回り(60-65bpの横這い圏内で推移)は大きく低下せず、株式が主なリスクアセット中でアウトパフォームしていた。リスクアセットであるBTCも6月末から先週まで大きな動きはみられなかった。むしろ7月21日にCommodity Futures Trading Commission:CFTCが公表したBTCの前週のNon-Commercial(非商業)先物ポジションをみるとネットで-1,700枚と6月末以来の大きさとなっている。これは、株式対比、BTCがアンダーパフォームしていたことからショートを増やしたことを示唆する。

しかし、ホワイトハウスがテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命じたとの報道が流れてから金融市場のセンチメントが大きく悪化。株式が売られる中、暗号通貨、特にイーサリアム(ETH)が大きくアウトパフォーム。イーサリアムは米国時間の22日、5分間で約8%上昇しきわめて重要なレジスタンスである250ドルを突破。その勢いをBTCも追随し、上昇した形になった。その後、中国側も米国に対し、中国南部の四川省成都にある総領事館を閉鎖するよう要求したとの報道が流れ、ETH、BTCともに上昇モメンタムがさらにつく。これら資産価格を動かしているのはリスク回避を目的とした中国マネーの可能性はあろう。仮に相場を大きく動かしたのが中国マネーであり、米中対立が悪化するようであれば、BTCはまだラリーの余地がある。また、10,000ドルを安定的に上回る相場が続けば、更に勢いづく可能性はある。ただ、注意したいのは、先物・オプションから示唆される非商業投資家動向としては、BTCが十分に上がったら売り・ショートが積み足されることから仮に10,000を超えてくるようであれば、こちらとしても(BTCJPYでも)利食いは常に意識しておきたいところである。なお、7月29日の連邦公開市場委員会(FOMC)では金融政策は現状維持が見込まれるが、量的緩和、フォワードガイダンスが強化されるリスクには注意されたい。その場合株式がパフォームし、暗号資産は売られる可能性はある。

テクニカル、政治情勢、金融政策と忙しい相場になるが、活気が戻ってきたことは喜ばしいことである。