緊急レポート:首相交代とビットコイン①

【要旨】安倍首相は8月28日夕方に自身の健康問題を理由に首相辞任を表明した。本緊急レポートでは、現状ある材料で安倍首相の辞任がどう暗号資産に影響を与えるか考察を行う。政治状況は大きく変わる可能性があるため、適時アップデートレポートを発行する。

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安倍首相は8月28日夕方に自身の健康問題を理由に首相辞任を表明した。現時点では次期自民党総裁、首相が誰になるのかわからない状態である(総裁選の方式、日程は二階俊博幹事長に一任されていると報道されている。9月1日の総務会で詳細が決まるが、今のところ両院総会方式で決まる見通し)。ただ、次期自民党総裁・首相(任期は前任者を引き継ぐため2021年9月まで)が安倍首相に近い人物になるようであれば、日本銀行の金融緩和、現行政府が行っている財政政策に大きな変更はないと考える。そうであれば、その他要因(例えばコロナウイルス感染症拡大、米国の政治状況、米中摩擦問題)の影響を一定と仮定すると、金融環境は大きく変わらず、暗号通貨相場には大きな影響は出ないと見る(ベースケース)。

一方でリスク要因として、仮に金融・財政政策が変わらなくても2012年末から日本のプレゼンスを高めてきた「アベノミクス」のブランディングは外れる事が上げられる。特に海外投資家の多くは、「アベノミクス」及び安倍政権の長期安定を理由に「日本買い」をしてきた。この「ブランディング」が外れる事によって日本のリスクアセット売りがこれから起きる可能性は高い。実際、28日に安倍首相が辞任するとの報道を受け株価は大きく下落、株式先物(2020年9月物)も日本の市場が引けてからも大きく弱含んだ。先物はロンドン、ニューヨーク時間にかけて一部下値で買いは入っていたが、ここ数日の高値である23,380円から大きく距離を置いた。ドル円も前日比1.13%低下し、1ドル=105.37円で週を終えた。これらの動きを見ているとやはり怖いのは外国人の「センチメント」から来る日本のリスクアセットの売りである。ここで問題となってくるのが今後、暗号資産だけでなく他のアセットを含みポートフォリオを組んでいた本邦投資家が、株式、為替でロスカットをせざるを得ない状況に追い込まれ、「現金化」が進むことである。

なお、ベースケースとしては第一段落で示した通り、日本の政治事情の暗号資産市場に対する影響はほぼなく、むしろ週次レポートで繰り返し示唆しているように海外要因に振り回される可能性が高いと見ている。ただ、第二段落で示したケースでは、投資家(特に財源があまり大きくない個人投資家)がリスクアセットを手放す必要が出てきて、株式、為替、暗号通貨、特にメジャーなビットコインへのエクスポージャーを落とす可能性はある。ただ、その一方で、「日本売り」の中、アセットクラスの入れ替えで暗号資産に資金が流れる可能性も考えられる。上記2ケースはあくまで現在ある材料で行った「頭の体操」の結果であるが暗号資産以外のリスクアセットをお持ちの読者にはぜひ「アベノミクス」のブランディングが外れることを外国人投資家が「どう思うか」を考えてほしい。彼らの動き次第で株式市場は大きく振れ、日本の金融環境が大きく変わる可能性があることを忘れてはいけない。政策関連の詳細がまだ公表されていないので適時アップデートを行う。